海瑠 (イニシエイト 4)

「かっこよかったわよ!」
  部室を出た所で、肩を叩かれ振り向いた拍子に、そう言葉を投げかけられた。そこには、藤波 紫穂が立っていた。目で海瑠を追っていた摩耶は、完全に海瑠を見失ってしまった。
「私、藤波 紫穂。紫穂って呼んでちょうだい。摩耶とは、いい友達になれそうな予感がするわ」
  海瑠に礼を言う事を諦めた摩耶は、紫穂に微笑みかけた。
「海瑠さんが助けてくれたから」
「黛先輩も、超カッコ良かったよね。バシッと決めるときは、決めちゃうタイプなんだ。惚れちゃいそうだわ、あの手のタイプ」
「紫穂さんも、自己紹介トップバッターだったのに、あんなにちゃんと出来て、私、尊敬してたの」
  紫穂は顔をおどけてしかめながら、右手首のスナップを利かせて、フルフルと振った。
「自己紹介する予測はついてたから、ちょっと考えてきてたんだ」
「スゴイ。私なんて、そんな事、考えもつかなかった」
  キュウキュウと鳴る階段を注意深く降りながら、ラウンジへと二人は向かった。
「ね、摩耶、あそこで手を振ってるの、部会の時に笑ったの注意された先輩じゃない?」
  紫穂の視線の先には、手を振っている女子学生が五、六人いる。紫穂はずんずんと学生の波をすり抜け、先輩の方へと歩いていく。摩耶は必死で紫穂の後を追った。




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