リレーde文芸




一九九九年 八月のテーマ  「言葉」

たった一つの言葉の裏には

  十人いれば十の
  百人いれば百の

     意味が存在する


そこにある事実の解釈も

  千人いれば千の
  一万人いれば一万の

     解釈が存在する


糸は絡まるだけだろうか
 糸はただれていくだけだろうか


それでも人は言葉を使う
  それは人であることの証
  それは心にある一点を共有したいと願う

     人の心の表れ


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白い朝だった。
6時に起きて母乳をやる私より先に、起きて階段を昇ってくる人がいる。
白い息を吐いていた。

母乳をやりおえ、朝の検診をうけ、部屋に戻ってみると、そこにはいつも暖かな朝食が待っていた。
それは、昼食も、夕食も、続く。
母乳が良く出るようにと、栄養や水分のことがとても考えられていた食事だった。

ありがたいという気持ちのかわりに、小さなメモに走り書きをした。
今日、何が美味しかったか。何に季節を感じたか。そして、当たり前だが、ご馳走さま、と。

退院の朝、食事を作ってくださっていた女性二人が、挨拶に見えた。
赤ちゃんの誕生のお祝いの言葉と、そして、
「ご馳走さまの言葉、ありがとうございます。今まで、言ってもらったことがなかったから、感激していたんです。」
ちょっと、赤面しながら、産院を後にした。

やはり、言葉は、素敵だと、思った。


西暦一九九九年 葉月 吉日

雅世







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「熱くて苦い酒」 「喪失」 「夏の日の思い出」 「出会い」


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