二〇〇〇年 十二月のテーマ  「プレゼント」




クリスマスイブの夜が更けていく。
子供たちはサンタクロースが今夜暖炉の煙突からプレゼントを持って来てくれると信じて、早々とベッドに入っていった。
夫と私は子供たちが寝静まる気配を確かめてから、クローゼットに隠していたおもちゃを引っ張り出し、ラッピングをはじめる。
本当にありふれていて普通のことだが、こうやってサンタクロースになれることが、どれだけ幸せなことか。

赤やグリーンの鮮やかな包装紙を鋏で切りながら、ふと、別のことを考えてしまう。

まだ私が高校生だった頃、友人と外国に対する援助について話し合ったことがある。
私は飢餓に喘ぐ国に対しての資金や物資の援助はするべきだと考えていた。
しかし、友人は違った。
アフリカの部族の中には、物資の援助によって働かなくなった男が、昼間からぶらぶらしているところもあるという。自然淘汰はどの世界にも必ずあるもの。豊かな国が問題を抱えた国に対して援助をしすぎるとその国を余計に駄目にしてしまうと言われた。
確かに、日本から贈られたトラクターが、運転する人もいず、燃料もなく、野ざらしになっているという報告を聞いたこともある。
豊かな日本に暮らしていると、これなら役にたつだろうと思える物資も、現地ではただの鉄屑の価値しかないこともある。
確かに、働き手の気概を削いでしまうこともあるのかもしれない。
しかし、自然淘汰だと言えるのは、自分が平和で満ち足りた世界に住んでいるから言えるのではないかと思うのだ。豊かな国に生きる命も、貧しい国に生きる命も、命には変わりないのに。

しかし、こんなことも聞いたことがある。

父から聞いたうろ覚えの話だが、江戸時代、飢饉で被害の大きかった藩に、幕府が米を贈った。それで少しでも飢餓の人を救うようにという親心だったのだろう。
しかし、家老はその米を全部売り、金に換えて学校を建てた。
武士も町人も受け入れたその学校からは、精鋭が輩出されたという。

祖母はよくこう言っていた。
「人間の身につけたものは、泥棒でも盗って逃げることはできない」と。

教育は、これからの国を支える人を作るのに必ず必要になる。
反対に、国内の混乱によって教育を受けたくても受けられない子供たちが、どれほどたくさんいるか。日本なら、小学校や中学校は義務教育だから誰でも入学できるが、ラオスなどでは登録料を支払わなければ入学することはできない。日本円でなら千円で十三人の子供が登録できるのだか、ラオスの国民総生産は一人当たり320ドル。1ドル110円とすると、3万5千200円。簡単に出せる額ではないだろう。
しかし、学校にいかなければ国民の文盲率は下がらない。字が読めなければ、情報を得る大きな手段が閉ざされてしまう。そのままでは、国も人々も貧しいままなのではないだろうか。

ときどき、日本からの資金が投入されて、貧しい国に白亜の鉄筋コンリートの学校が建てられたと聞くことがある。
鉄筋コンクリートの建物も素晴らしい贈り物だ。でも、大きな校舎はなくても、学校に子供が勉強に出かけることができたら。一人たった1本でもいいから、鉛筆があれば、ノートがあればと、私は思う。大きな校舎は、そんな子供たちが大きくなって自分たちの国を豊かにしてから、自分たちが建てたっていいのではないかと思うのだ。
ただ、そんな子供たちを生命の危機から救うことや、学校がある時間だけは、家の手伝いをせずに学校に行けるようにできれば、どれだけいいだろうか。

私の夫は子供ができてから、1年間無事に暮らせたことのお礼に、UNICEFへ僅かだか募金をすることを始めた。UNICEFではそのお金で、予防接種をしたり、脱水症状を起こした子供のための簡易経口飲料キットを配布している。
また、私の友人の中には、ネパールの少女のフォスターペアレントになっている。友人には一人娘がいるのだが、兄弟がいなくて寂しいという娘に、いつでも、血は繋がっていないけれど、姉がネパールに住んでいるのだと語り聞かせている。この制度では、フォスターチャイルドが18歳になるまで援助を続ける。友人は、フォスターチャイルドから来た手紙と絵を、私に見せてくれたこともある。
また、日本の難民を助ける会では、アフリカのHIV感染で苦しむ子供たちへの救済や、マラリア予防の蚊帳を贈ったり予防の教育の浸透に貢献している。また、先ほど例にあげたラオスの子供への学校登録料の支援を行っている。

贈られることも嬉しいプレゼント。
贈ることでこちらに返ってくる笑顔はそれ以上に嬉しい。
ほんの小さなプレゼントでもいい。地球の向こうに住む誰かの役にたてれば。
それは、その誰かにも、そして自分にも贈る、素敵なプレゼントではないだろうか。





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UNICEF
FOSTER PLAN
難民を助ける会

西暦二〇〇〇年 師走 吉日

雅世







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