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東大寺大仏殿の中門を左手に見ながら、坂道を登り、
手向山八幡宮から東大寺二月堂へと向かう。 二月堂の石段は、夏の光のせいで色が白く飛んでしまったように見える。 でも、この石段一段一段には、模様が刻まれている。 その美しさに足元を見ながら、石段を登る。 石段のわきには石灯篭がずらりと並ぶ。 お水取りのときには、この石段を松明が駆け上がり、回廊を抜け、もう一つの石段より駆け下りる。 奈良に春を呼ぶその行事のとき、その光景はニュースで流れたりする。 そんな、夜空のもとで行われる火の祭りも好きだが、蝉時雨が静寂を余計に感じさせてくれるこんな普通の日も、捨てがたい。 昇りきったところからは、奈良が一望できる。 昼間もよいが、黄昏時は、また、一段とよい。 |