2001年3月19日





「夢見月」


櫻貝のちいさな爪

ほとりと触れれば

固い雪に冷たい土に

小さなえくぼができる


頑なに縮こまった芽

ゆうるりと力抜き

産着から出る赤子の手

ぷっくりと膨らんで


薄桃の踵は

霜柱をとかし

氷を割り

春を覚ます


水晶響く声

朝焼けの色に梢は萌え

灰色の木肌はいつか

若草色のステンド硝子へ


土にひれ伏すものも

梢を天に伸ばすものも

芽を開き蕾をつけ

雪洞のように私に翳す


東雲の空から来る佐保姫は

まどろむ春をおこし

人の世に夢を落とす

無数のカンテラを照らして







零した言葉
アルビレオ日詩