2000年11月6日





「ココア」


甘いお砂糖を雪のように ひとさじ

ほろ苦いココアを悪魔の霧のように ふたさじ

小さなお鍋に 銀のスプーンがコツコツと

練り上げられる茶色の生き物は

幾筋もの線を穿ち 艶を増していく


あれも これもと 眉間に刻んだ皺も

うねる茶色いココアの底に みんな沈めて

今はただ スプーンの先だけを 響かせる


ひとかけらのバターと ひとさじのラム酒

ココアに命を吹き込む秘訣を教えてくれたのは

微笑みの似合う 逝ってしまった友


あなたが生きることの叶わなかった齢を

目の下に見出しながら

ただただと スプーンの先だけを 響かせる


白いミルクは うねる艶やかさを花火のように散らして

お鍋の底を洗ってゆく たぽりたぽりと

舌を焦がすほどに 熱く ほろ苦いココアは

戻れぬ思い出と 小さな秘密基地のような時間を運んでくる








零した言葉 アルビレオ日詩